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text by S.M.


こんにちは、はじめまして。

ぼく…いえ、私は第二班騎士候補生で、今年候補生二年目になります。

碧の第五師団長殿から記者殿の案内を命じられました。

私が代理で記者殿を鍛錬場までお連れします。

鍛錬場までは少し城の周りを歩くことになりますが…どうぞ、こちらです。


城内の植物園はご覧になりましたか?

今の時期は秋薔薇が大変美しいのですよ。

時間さえあれば――、ああ、あちらでは侍女たちが庭の手入れや洗濯をしています。

今日は良い天気ですので、屋外の鍛錬場で騎士と候補生たちが一緒に剣術の稽古をしているはずです。


――え、私の歳ですか?

今年十三になります。

…なるほど、記者殿は私のような子どもの騎士候補生が珍しいのですね?

確かに、私と同じ年頃で候補生になる者は少数です。

でも、毎年まったくいないわけではないのですよ。

例えば先ほどの第五師団長殿や、蒼碧の君のように…。

ほとんどの者は数え十五になるまで各家で一通りの教育を受け、それから候補生になることが多いようですが、私のように十そこそこで候補生になる者もおります。

候補生に年齢制限はありません。

私のような子どもであっても、騎士の資質を備え、志を高く持っているのならば年齢は関係ないのです。

私の場合は、両親の方針で基礎教育を早いうちに終えましたので、このように早くから候補生として城仕えをしております。

候補生として騎士様方の間近で修練を重ね、入団試験を受けて、騎士の称号をいただくことができたら、正式に騎士団の仲間入りとなります。


――ああ、見えてきました。

あの広場のような場所が騎士団の鍛錬場です。

やっぱり、今は騎士と候補生たちが使っているようですね。

ちょうど今、誰かが手合せをしているようですが…あれは、碧の君と――蒼の君ですね、すごい!

あっ、その、失礼しました…!

碧の騎士団長はよく候補生にもに稽古をつけておられるのですが、蒼の騎士団長は候補生の前ではあまり剣技を振るうことがないので、つい興奮し

てしまって…。

蒼の君は知略に長けると言われ、候補生にも戦略に関する講義などを行ってくださいます。

ですが、知略だけでなく剣技にも優れていなければ騎士団長は務まりません。

蒼の君の剣技は、王都一といわれる碧の君の剣技に勝るとも劣らないと聞いています。

私は蒼の君に憧れて候補生になったのです。

いずれは蒼の騎士団に入団して、蒼の君の――ひいては西の国のお役に立つことが私の夢です。

――もっと近くに行ってみましょう。



いけっ!そこだ!ああっ碧の君あぶないっ!

――ああ?今いいところ…なんだ、お前か。

ん?その後ろのお方は――ああ、あなたが噂の記者殿ですか。

これは失礼を。

私は第一班騎士候補生。今年五年目になります。


ふうん、なるほどね…さあさあ、そういうことなら記者殿、もっと前へ。

我らが騎士団長たちの滅多に見られない手合せですよ。

あなたは運が良い――王都一の腕前を持つ者同士の一騎打ちなど、今では国の公式行事でもなかなか見られないほどの、希少なものです。

まあ、今回は碧の君が勝つでしょうが――なんだ、お前、蒼の君贔屓だからってそう睨むなよ。

なにせ、碧の君の剣技は王国随一。

その剣技に惹かれて、私のような者が次々騎士を目指して候補生入りをするのですから。

もちろん、私は碧の騎士団志望ですよ。


うーん…なかなか決着がつかないなあ…。

ああ、…あなたは、二人の騎士団長のうち、どちらがよりお好きですか?

――いえね、大抵の者は蒼碧の騎士団長のうち、どちらかに好意が偏るのですよ。

私や…こいつも含め。

なにせ、あの二人は見た目も性格も正反対ですから。


碧の君は腕も立ち男らしい性格でサバサバしていますから、部下にもよく慕われています。

城の内外に友人も多く、団長という地位にありながら気さくなお方です。

城下の子どもから見ればヒーローのような存在です。

対して蒼の君は知的でまじめな性格ですから、優秀な若者や女性たちの憧れの的です。

騎士には縁のなさそうな王立大学の学生でさえ、蒼の君を目標とする者もいます。

あのお方は文官になってもやっていけますよ。

華々しく豪快な碧の君と、洗練され実直な蒼の君…それから有能な若き総司令官の第一王子の三人が、国中の若い娘たちの人気をわけていると言っても過言ではありません。

殿下は最近ご婚約されましたが、それでも人気は衰える気配がありませんね。

今度はきっと、良き夫、良き王として広く民の心ををつかんでいくのでしょう。

――っと、決着がついたか!?

…えっ?…引き分け!?

なんだ…剣が折れたか、惜しかったな…。

――おや、騎士団長がこちらに会釈をされましたね――あなたにですよ。

団長方はあなたの存在に気付いておられたようです。


団長方はこれから仕事に戻るようですね。

今の時間なら、王子が城下の視察に出る時間だから、護衛に行くのだと思います。

残念ですね、時間があれば直接団長と話せたかもしれませんが…。

――とはいえ、いいものが見れましたね、記者殿。

これであなたも騎士団に入りたくなったでしょう?

え?そんなことはない?

それは非常に残念です…。




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